論理文法に見るファジィらしさ4


 量化と同様に、修飾の問題も論理文法においてしばしば取り上げられる。ここでは、名詞を修飾す
る形容詞がテーマになる。また、それと関連してイディオムの内部を修飾する形容詞、例えば、“auf den leibhaftigen Hund kommen” の “leibhaftig” についても検討しますが、これは、フレー ゲの構成性原理がポイントになる。
 ここでは、修飾語のうち、特に名詞を修飾するまたはイディオムの一部を修飾する形容詞が議論の対象になる。まず、付加的な形容詞 「青い」の語彙登録に関するローカルな値の処理を見てみよう。指標の制限が形容詞からなる psoa と N ’主要部の名詞からなる psoa を含んだ N’ を形成するために、名詞の構成要素N’ と結合することになる。しばしば議論になるが、色彩用語は、その値自体が目盛りを固定する隠れたパラメータになることがある。ここでは、「青さ」を決定する尺度がそれに当たる。つまり、「青い」という関係が、付加的な役割 (STANDARD) を持っていて、その値は、文脈上で決まる特徴であり、「青さ」を決定するための標準を提供してくれる。これにより次のような形容詞に対して制約を設けることが可能になる。

a. Das ist ein schönes Fenster.
b. Ein schöner Anzug ist teuer.

 これらは、修飾する名詞と関連した特徴を変数とする関数として処理されるべきである。この立場に立つと、例えば、 “schön X”の内容は、Xの意味にかなり依存することになる。
 しかし、次のように、「美しい」の標準が、修飾される名詞(肋骨) によって決まらないことがある。

Hans Castorp wurde im Berghof hier oben geröntigt. Dadurch sah er zuerst eine schöne Rippe.

 重要な特徴(レントゲン写真)は、むしろ前述の文脈によって提供されると考えた方が自然である。標準 (STANDARD な属性値としての役割を果たすパラメータのアンカー)は、 修飾される名詞の特徴(関係)によって決まる一方、文脈に依存する場合もあるということになる。
 “angeblich” のような形容詞は、“angeblich X” が、“X” である必要がないという理由から制約と一致しないように見える。この場合、名詞の制約は、“angeblich” な関係の変数として挿入される。 そして、
“angeblicher Täter” のような N’ の内容は、nom-obj になる。この種の名詞により言及される個人は、文脈上決まるある個人が、実際に犯罪者でなくても、犯罪者であると主張したという 条件によってのみ成立するからである。

花村嘉英(2005)「計算文学入門-Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」より


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