投稿者: info@hana123.girly.jp

  • 高行健の『朋友」』で執筆脳を考える14

    【連想分析2】

    情報の認知1(感覚情報)  
     感覚器官からの情報に注目することから、対象の捉え方が問題になる。また、記憶に基づく感情は、扁桃体と関係しているため、条件反射で無意識に素振りに出てしまう。このプロセルのカラムの特徴は、①ベースとプロファイル、②グループ化、③その他の条件である。
     
    情報の認知2(記憶と学習)  
     外部からの情報を既存の知識構造へ組み込む。この新しい知識はスキーマと呼ばれ、既存の情報と共通する特徴を持っている。未知の情報は、またカテゴリー化される。このプロセスは、経験を通した学習になる。このプロセルのカラムの特徴は、①旧情報、②新情報である。

    情報の認知3(計画、問題解決、推論)  
     受け取った情報は、計画を立てるプロセスでも役に立つ。その際、目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。しかし、獲得した情報が完全でない場合は、推論が必要になる。このプロセルのカラムの特徴は、①計画から問題解決へ、②問題未解決から推論へである。

    花村嘉英(2021)「高行健の『朋友』で執筆脳を考える」より

  • 高行健の『朋友」』で執筆脳を考える13

    分析例

    1 友人と共に文学を学ぶ計画があると説明する場面。  
    2 この小論では、「朋友」の購読脳を「創造性と真実」と考えているため、意味3の思考の流れ、真実に注目する。   
    3 意味1①視覚②聴覚③味覚④嗅覚⑤触覚 、意味2 ①喜②怒③哀④楽、意味3真実①あり②なし、意味4振舞い ①直示②隠喩③記事なし    
    5 人工知能 ①命の尊さ、②楽天  
     
    テキスト共生の公式     
     
    ステップ1:意味1、2、3、4を合わせて解析の組「創造性と真実」を作る。
    ステップ2:友人と共に文学を学ぶ計画があると説明する場面は、友が反駁するも、社会が前進すれば突進せず、文化大革命後に深刻な文学はなく、前路は太平なため、創造性を働かせる必要を説く。従って、運命を信じ現在置かれている地位境遇に安んじ楽観する「命の尊さと楽天」という組を作り、解析の組と合わせる。   

    A:①視覚+③哀+①あり+①直示という解析の組を、①命の尊さと②楽天という組と合わせる。
    B:①視覚+③哀+②なし+①直示という解析の組を、①命の尊さと②楽天という組と合わせる。  
    C:①視覚+①喜+①あり+①直示という解析の組を、①命の尊さと②楽天という組と合わせる。 
    D:①視覚+④楽+①あり+①直示という解析の組を、①命の尊さと②楽天という組と合わせる。  
    E:①視覚+④楽+①あり+①直示という解析の組を、①命の尊さと②楽天という組と合わせる。    

    結果  表2については、テキスト共生の公式が適用される。

    花村嘉英(2021)「高行健の『朋友』で執筆脳を考える」より

  • 高行健の『朋友」』で執筆脳を考える12

    【連想分析1】
    表2 受容と共生のイメージ合わせ
    友人と共に文学を学ぶ計画があると説明する場面

    A 「你记得阿,托两斯泰的【苦难得历程】吗?」我问。「考大学之前,我们不是争论过究竟应该报考什么专业?我企图说服你同我一起学文学。你反驳我说;社会前进的道路已经不用我们来闯了。大革命的时代完成了,没有巨大的社会变革就不会有深刻的文学,32页 我们面前的路太平坦了,时代留给我们的只剩下创造性的劳动。你记得不?」意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能 2

    B 「我们不争论了。」你把手一挥·。「谈谈你的情况。」「我没什么好谈的,没被枪毙过,也没有被批门过,只因为一度捲进派性里去,办了我一个月的学习斑,连上厕所都有尾巴跟著。怕我串联,如此而已。」
    意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能 1

    C 「对了,天安门事件的时候你在北京吗?」「在。」「六九年枪毙我的时候,我道没什么痛苦。只是后来,政治变动反反覆覆,没完没了,什么事情也不能做,那才受不了,可我从广播中听到【天安门暴乳】的时候,我倒突然看到了希望。我当时想,要能见到你,我一定要问问当时的真实情况。」
    意味1 1、意味2 1、意味3 1、意味4 1、人工知能 2

    D 「我倒是天天去,还拍了很多照片。」「冯直觉,我就想到,你在北京的话,一定会去的!你这个搞文学的人,怎么能放过这个场面?」我笑了说・・・「有时为了选镜头,不得不登高,站到栏杆上,爬到燈柱子上去,被盯梢上了。」「你怎么发现的?」「我天天去,他们也天天在。在加上他们那身公家发的蓝大衣,彼此都面熟了。」「后来没查到你?」意味1 1、意味2 4、意味3 1、意味4 1、人工知能 1

    E 33页 「我毕竟不是小孩子,我把自行车的拍照下掉了。」你呵呵大笑。「不过,事后一个月我没骑过自行车上街。第二个月就请探亲假回来,混了近两个月才回的北京的。」「你那写照片还在?」「底片都在,不过有些霉点。我当时包上锡纸,装在塑料口袋里,埋在花盆的泥土里。」你点点头・・・这就是我们经历的时代。我明白你的意思。意味1 1、意味2 4、意味3 1、意味4 1、人工知能 2

    花村嘉英(2021)「高行健の『朋友』で執筆脳を考える」より

  • 高行健の『朋友」』で執筆脳を考える11

    4 データベースの作成・分析  

     データベースの作成方法について説明する。エクセルのデータについては、列の前半(文法1から意味5)が構文や意味の解析データ、後半(医学情報から人工知能)が理系に寄せる生成のデータである。一応、L(受容と共生)を反映している。データベースの数字は、登場人物を動かしながら考えている。
     こうしたデータベースを作る場合、共生のカラムの設定が難しい。受容は、それぞれの言語ごとに構文と意味を解析し、何かの組を作ればよい。しかし、共生は、作家の知的財産に基づいた脳の活動が問題になるため、作家ごとにカラムが変わる。

    【データベースの作成】  

    表1 「朋友」のデータベースのカラム
    文法1 態 能動、受動、使役。  
    文法2 時制、相 現在、過去、未来、進行形、完了形。
    文法3 様相 可能、推量、義務、必然。
    意味1 五感 視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚。
    意味2 喜怒哀楽 情動との接点。瞬時の思い。
    意味3 思考の流れ 真実ありなし。
    意味4 振舞い ジェスチャー、身振り。直示と隠喩を考える。
    医学情報 病跡学との接点 受容と共生の接点。購読脳「創造性と真実」と病跡学でリンクを張るためにメディカル情報を入れる。
    情報の認知1 感覚情報の捉え方 感覚器官からの情報に注目するため、対象の捉え方が問題になる。また、記憶に基づく感情は、扁桃体と関係しているため、条件反射で無意識に素振りに出てしまう。
    情報の 認知2 記憶と学習 外部からの情報を既存の知識構造に組み込む。この新しい知識はスキーマと呼ばれ、既存の情報と共通する特徴を持っている。その際、未知の情報については、学習につながるためカテゴリー化する。記憶の型として、短期、作業記憶、長期(陳述と非陳述)を考える。
    情報の 認知3 計画、問題解決、推論 受け取った情報は、計画を立てるときにも役に立つ。目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。獲得した情報が完全でない場合、推論が必要になる。
    人工知能 命の尊さと楽天 エキスパートシステム 命の尊さとは、人の命を敬い重んじることであり、楽天とは、人生を楽観し、あくせくしないことをいう。

    花村嘉英(2021)「高行健の『朋友』で執筆脳を考える」より

  • 高行健の『朋友」』で執筆脳を考える10

    ●天安门事件的时候你在北京吗?在。六九年枪毙我的时候,我倒没什么痛苦,只是后来,政治变动反反覆覆,没完没了,什么事情也不能做,可我从广播中听到「天安门暴乱」的时候,我一定要问问当时的真实情况。
     天安門事件(1989)のとき、君は北京にいた。1969年私の原稿が没になったとき、苦痛はなく、政治の変動が繰り返された。完了せずどんな仕事も出来なくなり、天安門の暴乱を聴いたとき、必ず真実の状況を問わねばならないと思った。(3)
    ●天安门事件之后,我一个晚上全部烧掉了。那稿子将近四十万字。
    天安門事件後、一晩で原稿を全部燃やしてしまった。原稿は40万字に及んだ。(3)
    ●最后一章的结尾是・・主人公在大山里走了很久,疲倦极了,躺在看山人用巴茅草搭的窝棚里。没有鸟雀叫,也没有昆蟲嘶鸣,四下十分寂静,只有两峰之间一片异常明洁的天空。顶峰之下,荆棘叢生。这是很美的。你因该把它重新写出来!用手擦去玻璃窗上的水气,凝望著窗外。下雪了。街上没有风。雪花无声无息落在衣领子上。我们一同上小学,随后又一同上中学。那当然,你这条命可是捡来的。你没有骂出口,我们就笑了。
     最後の章で、主人公は山中を長いこと歩き、疲れて横になり山を見ている。鳥や雀の泣き声も虫や興梠の泣き声もしない。静寂で峰の間に奇麗な天空がある。峰の下には茨が生えている。とても美しい。書き残すべきである。手でガラス窓を擦り、目を凝らしてみる。雪である。街に風はなく、雪花は声も息もなく襟にある。我々は共に小学、中学へ毎日歩いて通った。命は拾ってきた。罵ることなくすぐ笑った。(3)
     
     読み終えてからLの分析をすると、購読脳については、文化大革命と天安門事件をキーワードとし、「創造性と真実」を考える。執筆脳は「命の尊さと楽天」となり、購読脳と執筆脳を合わせたシナジーのメタファーは、「高行健と楽天知命」にする。高行健の「朋友」に対する基本姿勢は、内心の感情を外界へと投射する主観の調節が一番多い。

    花村嘉英(2021)「高行健の『朋友』で執筆脳を考える」より

  • 高行健の『朋友」』で執筆脳を考える9

    ●我想起十三年前你最后给我的呢封信・・・我没有立刻回你这封信,可我一直想婉转提醒你,书信也好,说话也好,不要带这分俏皮,因为那时候政治气氛已经十分紧张了,免得惹来麻烦。两个月后,这场翻天覆地的文化革命便爆发了,谁也不知道谁的命运如何,我预感到你得灾难,而后你果真音讯全无。
     13年前私に送った最後の手紙を思い出す。すぐに返事は出さなかった。婉曲した言い方で手紙を書くのは良いし話をするのもよいけど、洒落ている必要はない。その時の政治気分が十分に緊張していたため、煩わしさを避ける狙いがあった。間もなく天地を翻す文化大革命(1966-1976)が爆発した。誰も人の運命のことはわからない。君に災難が降りかかる予感がし、果たして音信は不通になった。(3)
    ●死并不可怕,只不过是一种遗憾。面对死亡不会这样平静,我要喊叫,要抗议这种愚蠢荒谬的死亡。
     死は恐れるに非ず、但しある種の遺憾はある。死に面して冷静ではいられない。叫びながらこの種の愚かで間違った死に抗議しろ。(3)
    ●我哼了这个中那个苦苦探索,热切追求的主题,你连连点头。那是个急速上升,又中断了,又急速上升的旋律。那是对未来,对理想对一种灿烂的生活的激情的呼唤。它默燃过我,默燃过你。这就是相隔了十三年,你我经历了生离死别,我们之间却依然息息的相通的精神。
     鼻歌を歌い曲の中の苦しみを探し、主題を追求する。君は頷く。旋律は、中断したり上昇したりする。未来に対し、理想に対し、一種の光輝く生活の激しい感情の叫び。私を燃やし君を燃やす。13年の隔たりは、生まれ離れ死で別れることになる。我々の間で相通した精神は後退する。(3) 
    ●我企图说服你同我一起学文学。你反驳我说。社会前进的道路已经不用我们来闯了。大革命的时代完成了,没有巨大的社会变革就不会有深刻的文学,我们面前的路太平坦了,时代留给我们的只剩下创造性的劳动。
     私と一緒に文学を学ぼうと説得したことがある。君は反駁した。社会が前進する道路は、すでに我々の突進を必要としない。文化大革命の時代は、完成した。巨大な社会の変革はなく、深刻な文学もない。前途は太平であり、時代が我々に残したものは、創造性の労働である。(3)

    花村嘉英(2021)「高行健の『朋友』で執筆脳を考える」より

  • 高行健の『朋友」』で執筆脳を考える8

    ●而十三年年后,你依然是你,我也没变?你又笑了。你已经有了白头发了,两髭和前额都分明夹杂著根根白发。你只不过比我大两才。领导班子里六十多才还算年轻。
    13年経っても君は変わらずに君である。私も私のままなのか。君はすでに白髪がある。髭にも額にも白髪がある。私より2つ年上でもう中年の域である。しかし、指導者として60歳はまだ若い。(3)
    ●毛毛刚考上了研究生,当太学生。你又哈哈大笑。居然还这样乐天。真枪毙过你?差点没到马克思老人家那里报道去。你说得很认真。
    研究生の試験に合格し、大学生になった。以外にも大笑いで楽天的である。君は銃殺されたのか。銃殺された、もう少しでマルクス老人の家に至らず出頭する所であった。笑いはない。(1、3)
    ●死真不是滋味,不过,死并不可怕。问题是死得这样年轻。冤鬼多著呢,我算不了什么。十五年前,我们刚大学毕业。
    死はどんな味なのか。偽の銃殺である。死は味などなく恐れるに非ず、何もしやしない、無実の罪の幽霊が非常に多くて計算しきれない。15年前、大学を卒業した。(3)
    ●他们把我带到我们地质队的东方红革命造反司令部,就好比战争时期得前线指挥部,而是在食堂隔壁,审完了吃消夜方便。你还像中学时代一样。
    東方紅革命造反司令部に私を引き連れ、戦争時期の前線指導部と好んで比較し、食堂にいても夜食を食べるのに便利かどうか審査した。中学時代のことである。(2) 

    花村嘉英(2021)「高行健の『朋友』で執筆脳を考える」より

  • 高行健の『朋友」』で執筆脳を考える7

    3 「朋友」のLのストーリー 

     高行健も自身で作家について考え、私もシナジーのメタファーで作家の執筆脳について考えている。平たくいえば、問題は、作家の頭の使い様である。
     飯塚(2005)によると、高行健の小説を書くための基本姿勢は、1非ストーリー性、2人称の変化、3主観の表出である。

    1 非ストーリー性とは、ストーリーを語る意図がなく、所謂プロットがない。つまり、主題を中心とする登場人物の性格や心理描写が限られている。小説という言語の芸術は、現実の模写ではなく、言語の実現を意味する。
    2 人称の変化とは、人物形象の描写に頼ることなく、異なる人称を使って、読者の受け取りに角度を与えている。角度は転換することができ、角度と距離を変えて観察し体験することができる。 
    3 主観の表出は、環境に対する純然たる客観描写を排除しているため、内心の感情を外界へと投射する。
    実際に「朋友」の中身を見てみよう。

    花村嘉英(2021)「高行健の『朋友』で執筆脳を考える」より

  • 高行健の『朋友」』で執筆脳を考える6

     作家は、創生の主役を担わない、また自己精神を錯乱させて狂人に変え、現世を幻に変え、体以外のものは全て浄罪界になり、自然と降りることはない。他人はもちろん地獄で、自我が制御できなければ、どうしてこのようにならないのか。未来のために自分を祭りの品にし、人を犠牲にする必要はない。
     作家は、預言者ではない。人を騙さず、妄想を失くし、同時に自我を審査する。自我が混沌となり、質疑の下、世界が他人を興すと同時に自己を回顧してもよい。災難や圧迫は、外部から来て、自身の臆病は苦痛を深刻にし、他人に不幸をもたらす。
     作家は、真実を提言する。作家は、真実の洞察力を把握し、作品の品格の高低を決定する。作家は、粗探しをしながら独特の叙述方式の過程の中で感知を実現する。
     作家は、報酬を計算せずに自分の必要を書き、自身を肯定するだけでなく、社会に対して挑戦するのも自然である。作家個人の感情は、作品の中で解けて文学になる。作品が社会に対する挑戦となる。不朽の名作とは、時代や社会の有力な回答である。喧しいことは消え、読者が繰り返して読むことにより作品の中の声が残る。文学は、正に歴史の補充である。 

    花村嘉英(2021)「高行健の『朋友』で執筆脳を考える」より

  • 高行健の『朋友」』で執筆脳を考える5

    2.3 作家と読者の関係

     高行健は、10年前「霊山」の後、短文を書いている。文学はもともと政治とは無縁で、単に個人の事情であり、まずは観察で経験に対する回顧となり、憶測や感受も心態の表現で思考に対し満足する。
     作家は、ただ話して書く際、一個人であり、他人は、聞くも聞かないもでき、読むも読まないもできる。作家は、人民に命じる英雄でなく、偶像崇拝に値せず、罪人や民衆の敵でもない。権力や勢いが敵人を作り、民衆に注意を移すと、作家はある種の犠牲品になる。不幸のために眩暈がする作家は、以外にも祭品に当たり光栄となる。
     作家と読者の関係は、作品を通じて精神的に交流するだけである。読み書きは、自分で感じ自分で願う。そのため、文学は大衆においてどんな義務にも負けない。作家は、創作に従事する。難を持って生を維持するもある種の贅沢として精神的に満足する。出版作業は幸せである。社会の認可を求めず、報奨を望まない精神活動だからである。

    花村嘉英(2021)「高行健の『朋友』で執筆脳を考える」より