カテゴリー: 未分類

  • 坂口安吾の「肝臓先生」で執筆脳を考える8

    表3 認知プロセス

    A 表2のAと同じ。情報の認知1 2、情報の認知2 2、情報の認知3 1
    B 表2のBと同じ。情報の認知1 2、情報の認知2 2、情報の認知3 2
    C 表2のCと同じ。情報の認知1 2、情報の認知2 2、情報の認知3 1
    D 表2のDと同じ。情報の認知1 2、情報の認知2 1、情報の認知3 2
    E 表2のEと同じ。情報の認知1 2、情報の認知2 1、情報の認知3 2

    情報の認知の流れ
    A 情報の認知1は②グループ化、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は①計画から問題解決へ、である。
    B 情報の認知1は②グループ化、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は②問題未解決から推論へ、である。
    C 情報の認知1は②グループ化、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は①計画から問題解決へ、である。
    D 情報の認知1は②グループ化、情報の認知2は①旧情報②新情報、情報の認知3は②問題未解決から推論へ、である。
    E 情報の認知1は②グループ化、情報の認知2は①旧情報②新情報、情報の認知3は②問題未解決から推論へ、である。 

    結果 
     赤城風雨は、伊東の診療所で診察しながら思う問題を恩師の謝恩会の席で参加者に問うているため、上記場面では問題未解決から推論へが多い。

    花村嘉英(2020)「坂口安吾の『肝臓先生』の執筆脳について」より

  • 坂口安吾の「肝臓先生」で執筆脳を考える7

    【連想分析2】

    情報の認知1(感覚情報)
     感覚器官からの情報に注目することから、対象の捉え方が問題になる。また、記憶に基づく感情は、扁桃体と関係しているため、条件反射で無意識に素振りに出てしまう。このプロセルのカラムの特徴は、①ベースとプロファイル、②グループ化、③その他の反応である。

    情報の認知2(記憶と学習)
    外部からの情報を既存の知識構造へ組み込む。この新しい知識はスキーマと呼ばれ、既存の情報と共通する特徴を持っている。未知の情報はまたカテゴリー化される。このプロセスは、経験を通した学習になる。このプロセルのカラムの特徴は、①旧情報、②新情報である。

    情報の認知3(計画、問題解決、推論)
    受け取った情報は、計画を立てるプロセスでも役に立つ。その際、目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。しかし、獲得した情報が完全でない場合は、推論が必要になる。このプロセルのカラムの特徴は、①計画から問題解決へ、②問題未解決から推論へ、である。

    花村嘉英(2020)「坂口安吾の『肝臓先生』の執筆脳について」より

  • 坂口安吾の「肝臓先生」で執筆脳を考える6

    分析例
    意味1①喜②怒③哀④楽、意味2①視覚②聴覚③味覚④嗅覚⑤触覚、意味3振舞い①直示②隠喩、意味4行動のトリガー①あり②なし、人工知能①意欲②普遍性 

    テキスト共生の公式
    ステップ1 解析の組は、町医者の思い(意味1、2、3)と行動のトリガー(意味4)とする。 
    ステップ2 町医者の特性から「①意欲と②普遍性」という組を作り、解析の組と合わせる。
     
    A 町医者の思い(③哀+⑤触覚+①直示)と行動のトリガー(①あり)という組を、町医者の特性(人工知能①意欲なし②普遍性あり)からなる組と合わせる。 
    B 町医者の思い(①喜+②聴覚+①直示)と行動のトリガー(①あり)という組を、町医者の特性(人工知能①意欲なし②普遍性あり)からなる組と合わせる。 
    C 町医者の思い(③哀+⑤触覚+①直示)と行動のトリガー(①あり)という組を、町医者の特性(人工知能①意欲なし②普遍性あり)からなる組と合わせる。 
    D 町医者の思い(③哀+②聴覚+①直示)と行動のトリガー(①あり)という組を、町医者の特性(人工知能①意欲なし②普遍性あり)からなる組と合わせる。
    E 町医者の思い(④楽+①視覚+①直示)と行動のトリガー(①あり)という組を、行動のトリガー(人工知能①意欲あり②普遍性なし)からなる組と合わせる。
    結果  表2については、テキスト共生が適用される。

    花村嘉英(2020)「坂口安吾の『肝臓先生』の執筆脳について」より

  • 坂口安吾の「肝臓先生」で執筆脳を考える5

     ある場面の信号の流れから、シナジーのメタファーが成立することを説明する。

    【連想分析1】
    表2 受容と共生のイメージ合わせ 戦時中の病気の蔓延

    A さて、次に、ひとつ、お願いがございますが、昭和七年満州事変以来、ポツポツ亜黄疸の患者があって肝臓肥大に気付くようになりましたが、その当時はちょッとフシギと思った程度で、たいして気にも留めませんでした。ところが、昭和十二年末ごろから、年々かような患者を見うけることが急速に、かつ、非常に多くなって、殊に感冒患者はほとんど肝臓肥大で圧痛あることが普通のこととなったのであります。
    意味1 3、意味2 5、意味3 1、意味4 1、AI2

    B そこでこの四五年というものは、アナタも肝臓がわるい、アナタも、アナタも、と言わざるを得ないものですから、あの医者は肝臓医者だ、あそこへ行くと、みんな肝臓にされてしもう、こう言って呆れてほかの医者へ転じてしもう人も多くなりましたが、又一方には、遠路はるばる宿をもとめて肝臓の診察を乞う人もあり、うれしい思いをさせられる折もあります。意味1 1、意味2 2、意味3 1、意味4 1、AI2

    C ちかごろに至りましては流感の患者、肺炎の患者、胃腸の患者の八九十%以上に、肝臓の肥大圧痛が触診されるのでありまして、昭和十二年末から現在まで、二千例あるいはそれ以上かような患者を扱ったのですが、これらを集約して、私は流行性肝臓炎とか流感性肝臓炎とか名づけて然るべき病気ではないかと思っているのであります。意味1 3、意味2 5、意味3 1、意味4 1、AI2

    D 支那大陸から持ちこまれた流感に関係があるのではないかと思っております。いずれに致しましても、かように多くの患者に向って、アナタも肝臓である、アナタも、アナタも、と申しましては、患者の中にはインチキと思う人もあり、同業者までインチキ視しまして、あれはフランスの医者であるとか、赤城氏性肝臓炎とか言いふらし、かくては当物療科の名誉を傷け、大先生の御恩にも背き、温泉療養所の先生方の目ざましい功績までも汚すことになるのではないかと心から恐れているのであります。
    意味1 3、意味2 2、意味3 1、意味4 1、AI2

    E それでお願いと申しますのは、この事実を申上げて篤学の皆様方の御研究の参考になって欲しいと祈るものでございます。謝恩会の席をかりまして、皆々様の御関心御研究をひたすらお願い致す次第であります。
    意味1 4、意味2 1、意味3 1、意味4 1、AI1

    花村嘉英(2020)「坂口安吾の『肝臓先生』の執筆脳について」より

  • 坂口安吾の「肝臓先生」で執筆脳を考える4

    3 データベースの作成・分析

     データベースの作成法について説明する。エクセルのデータについては、列の前半(文法1から意味5)が構文や意味の解析データ、後半(医学情報から人工知能)が理系に寄せる生成のデータである。一応、L(受容と共生)を反映している。データベースの数字は、もちろん登場人物を動かしながら考えている。
     こうしたデータベースを作る場合、共生のカラムの設定が難しい。受容は、それぞれの言語ごとに構文と意味を解析し、何かの組を作ればよい。しかし、共生は、作家の知的財産に基づいた脳の活動が問題になるため、作家ごとにカラムが変わる。

    【連想分析1】
    表1 「肝臓先生」のデータベースのカラム 
    項目名 内容      説明
    文法1 名詞の格   安吾の助詞の使い方を考える。
    文法2 ヴォイス   能動、受動、使役。
    文法3 テンス、アスペクト 現在、過去、未来、進行形、完了形。
    文法4 モダリティ 可能、推量、義務、必然。
    意味1 五感 視覚、  聴覚、味覚、嗅覚、触覚。
    意味2 喜怒哀楽   情動との接点。瞬時の思い。
    意味3 振舞い   ジェスチャー、身振り。直示と隠喩を考える。
    意味4 行動のトリガー あり、なし。
    医学情報 病跡学との接点 受容と共生の共有点。構文や意味の解析から得た組「流行性肝臓炎と治療」を共生にスライドさせるため、メディカル情報をここに置く。
    記憶 短期、作業記憶、長期(陳述と非陳述) 作品から読み取れる記憶を拾う。長期記憶は陳述と非陳述に分類される。
    情報の認知1 感覚情報の捉え方 感覚器官からの情報に注目するため、対象の捉え方が問題になる。例えば、ベースとプロファイルやグループ化または条件反射。
    情報の認知2 記憶と学習 外部からの情報を既存の知識構造に組み込む。その際、未知の情報についてはカテゴリー化する。学習につながるため。記憶の型として、短期、作業記憶、長期(陳述と非陳述)を考える。
    情報の認知3 計画、問題解決、推論 受け取った情報は、計画を立てるときにも役に立つ。目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。獲得した情報が完全でない場合、推論が必要になる。
    人工知能(意欲) エキスパートシステム 意味や目的を持った行動の動機や行動を制御する意志や欲求からなる積極的な精神作用。
    人工知能(普遍性) エキスパートシステム 様々な折に、あてはまる可能性のこと。

    花村嘉英(2020)「坂口安吾の『肝臓先生』の執筆脳について」より

  • 坂口安吾の「肝臓先生」で執筆脳を考える3

     戦後堕ちきることを想定した安吾は、アドルムやヒロポンを服用したため、これらの副作用や不規則な生活からうつ病の病前性格が表れる。1948年の梅雨時からうつ病の症状がでる。
     執筆活動は続けるも、アドルム、ヒロポンを引き続き服用したため、病状は悪化し、幻聴、幻視も見られ、1949年1月に狂乱状態に陥り、睡眠薬中毒と神経衰弱で2月に東京大学医学部付属病院に入院した。治癒後4月に退院し執筆活動を再開するも、薬物でまたも病気が再発し、その夏に夫人とともに療養を兼ねて伊東へ移り、1950年1月「肝臓先生」を出版した。
     ここで心の病との関連を考えることができる。花村(2019)は、心の病気の原因として、一つが生物学的な基盤、また一つが無意識の心理、即ち、生活から生まれる思考パターンとか社会や文化の影響などを挙げている。前者は身体因による精神の病であり、後者は心因による心の病である。
     坂口安吾の場合、執筆意欲の反面、心因による心の病が考えられる。こうした心の病からの出版でも何か行動を起こすとき、欲求や衝動が行動のトリガーとなり、目的を持った行動を心掛けるための意思が働く。日本成人病予防協会では、行動を制御する意思と欲求を合わせて意欲といい、物事を積極的に行おうとする精神作用としている。赤城風雨の場合、行動のトリガーによる治療から医者としての普遍的な気持ちがあるといえる。
     そこで、「肝臓先生」の購読脳から執筆脳の信号の流れを長期に渡る薬物の服用に対する漠然とした不安感にする。数々の病歴を重ねてからの図書出版のためである。以下では、「肝臓先生」に関し「坂口安吾と正義ある普遍性」というシナジーのメタファーを考える。

    (1) 購読脳から執筆脳への信号の流れ
    購読脳「流行性肝臓炎と治療」→執筆脳「意欲と普遍性」、故に「坂口安吾と正義ある普遍性」

    花村嘉英(2020)「坂口安吾の『肝臓先生』の執筆脳について」より

  • 坂口安吾の「肝臓先生」で執筆脳を考える2

    2 坂口安吾(1906-1955)の「肝臓先生」のLのストーリー

     「肝臓先生」(1950)の購読脳を「流行性肝臓炎と治療」とし、共生の読みによる心的活動からの執筆脳を「意欲と普遍性」にする。主人公の赤城風雨は、伊東の町医者で温泉街の診療所に来る患者を診察し治療を続ける。
     周知のように、戦時中は様々な病気が日本中を蔓延した。1932年(S7)満州事変以来、亜黄疸の患者による肝臓肥大が見られるようになり、志那事変が始まる1937年(S12)にはこうした患者が急速に増え、殊に感冒患者は、ほとんど肝臓肥大で圧痛を訴えることが普通となった。診る患者のほとんど全部の肝臓が腫れている。あまりのことに驚いて、脚気の患者も頭痛の患者も容赦なく胸をあけて肝臓を調べると、例外なく肝臓を腫らしている。疑いもなく肝臓炎の症状だ。伊東の風土病などではない。
     風雨は、2000例以上こうした患者を治療し、集約して流行性肝臓炎とか流感性肝臓炎とか名づけた。支那大陸から持ちこまれた流感と関係があるに違いない。恩師の謝恩会の席で著名な肝臓の権威から報告が正しいといわれ、風雨は、大喜びする。 

    花村嘉英(2020)「坂口安吾の『肝臓先生』の執筆脳について」より

  • 坂口安吾の「肝臓先生」で執筆脳を考える1

    1 先行研究

     文学分析は、通常、読者による購読脳が問題になる。一方、シナジーのメタファーは、作家の執筆脳を研究するためのマクロに通じる分析方法である。基本のパターンは、まず縦が購読脳で横が執筆脳になるLのイメージを作り、次に、各場面をLに読みながらデータベースを作成し全体を組の集合体にする。そして最後に、双方の脳の活動をマージするために、脳内の信号のパスを探す、若しくは、脳のエリアの機能を探す。これがミクロとマクロの中間にあるメゾのデータとなり、狭義の意味でシナジーのメタファーが作られる。この段階では、副専攻を増やすことが大切である。 
     執筆脳は、作者が自身で書いているという事実及び作者がメインで伝えようと思っていることに対する定番の読み及びそれに対する共生の読みと定義する。そのため、この小論では、トーマス・マン(1875-1955)、魯迅(1881-1936)、森鴎外(1862-1922)の執筆脳に関する私の著作を先行研究にする。また、これらの著作の中では、それぞれの作家の執筆脳として文体を取り上げ、とりわけ問題解決の場面を分析の対象にしている。さらに、マクロの分析について地球規模とフォーマットのシフトを意識してナディン・ゴーディマ(1923-2014)を加えると、“The Late Bourgeois World”執筆時の脳の活動は、意欲と組になることを先行研究に入れておく。
     筆者の持ち場が言語学で意味論のため、購読脳の分析の際に、何かしらの言語分析を試みている。例えば、トーマス・マンには構文分析があり、魯迅にはことばの比較がある。そのため、全集の分析に拘る文学の研究者とは、分析のストーリーに違いがある。文学の研究者であれば、全集の中から一つだけシナジーのメタファーのために作品を選び、その理由を述べればよい。なおLのストーリーについては、人文と理系が交差するため、機械翻訳などで文体の違いを調節するトレーニングが推奨される。
     なお、メゾのデータを束ねて何やら予測が立てば、言語分析や翻訳そして検定に基づくミクロと医学も含めた観察社会論からなるマクロとを合わせて、広義の意味でシナジーのメタファーが作られる。

    花村嘉英(2020)「坂口安吾の『肝臓先生』の執筆脳について」より

  • 高行健の『朋友」』で執筆脳を考える16

    4 まとめ   

     高行健の執筆時の脳の活動を調べるために、まず受容と共生からなるLのストーリーを文献により組み立てた。次に、「朋友」のLのストーリーをデータベース化し、最後に文献で止めたところを実験で確認した。そのため、テキスト共生によるシナジーのメタファーについては、一応の研究成果が得られている。
     短編小説集の他の作品を見ると、例えば、「円恩寺」の中で新婚旅行にありがちな一場面を実現し、カップル以外の登場人物も読者に身近な存在で、小説の中の名称に対し作者の内心を投射している。「朋友」の執筆脳で見た「命の尊さと楽天」から高行健のシナジーのメタファーとした楽天知命が反映されている。

    参考文献

    花村嘉英 計算文学入門-Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか? 新風舎 2005
    花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品-魯迅をシナジーで読む 華東理工大学出版社 2015
    花村嘉英 日语教育计划书-面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用 日本語教育のためのプログラム-中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで 南京東南大学出版社 2017
    花村嘉英 从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲 華東理工大学出版社 2018
    花村嘉英 シナジーのメタファーの作り方-トーマス・マン、魯迅、森鴎外、ナディン・ゴーディマ、井上靖 中国日语教育研究会上海分会論文集 2018  
    花村嘉英 川端康成の「雪国」に見る執筆脳について-「無と創造」から「目的達成型の認知発達」へ 中国日语教育研究会上海分会論文集 2019
    花村嘉英 社会学の観点からマクロの文学を考察する-危機管理者としての作家について 中国日语教育研究会上海分会論文集 2020
    花村嘉英 三浦綾子の「道ありき」でうつ病から病跡学を考える 中国日语教育研究会上海分会論文集 2021年
    花村嘉英 計算文学入門(改訂版)-シナジーのメタファーの原点を探る V2ソリューション 2022
    高行健 高行健短編小説集 聯合文學 2008
    高行健 母(飯塚容訳)集英社 2005
    高行健 Wikipedia 

  • 高行健の『朋友」』で執筆脳を考える15

    表3 情報の認知

    A 表2と同じ。 情報の認知1 2、情報の認知2 2、情報の認知3 1
    B 表2と同じ。 情報の認知1 3、情報の認知2 1、情報の認知3 2
    C 表2と同じ。 情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 1
    D 表2と同じ。 情報の認知1 2、情報の認知2 2、情報の認知3 2
    E 表2と同じ。 情報の認知1 2、情報の認知2 2、情報の認知3 2

    A:情報の認知1は②グループ化、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は①計画から問題解決へである。  
    B:情報の認知1は③その他の条件、情報の認知2は①旧情報、情報の認知3は②問題未解決から推論へである。
    C:情報の認知1は③その他の条件、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は①計画から問題解決へである。  
    D:情報の認知1は②グループ化、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は②問題未解決から推論へである。
    E:情報の認知1は②グループ化、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は②問題未解決から推論へである。    

    結果  高行健は、この場面で写真の原版のネガは黴が生えているも存在し、銀紙に巻かれ塗料を塗った袋にあり、それが経歴の時代の写しで大切に楽観すると説いているため、購読脳の「創造性と真実」から「命の尊さと楽天」という執筆脳の組を引き出すことができる。 

    花村嘉英(2021)「高行健の『朋友』で執筆脳を考える」より